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昨晩は多くの方にお越しいただいて、熱く応援していただき、温かく見守っていただいて、心よりありがとうございます。おかげさまで、メンバー全員で、おもいっきりチャレンジしながら楽しい音で遊ぶ事ができました。
自分の予想も裏切られるくらい楽しかったです。
店長をはじめ、スタッフの皆様のとても心強いサポートありがとうございました。

お越しくださっていたライターの梅内智さんが、とても励みになる、今後の力になるリヴューを書いてくださったので、ここでシェアさせてください。ありがとうございます。




Nori Ohiai Trio with LiLi&堀内美智代:Nori Ochiai(p), Mark Tourian(b), Gene Jackson(ds), LiLi(vo), Michiyo Horiuchi(vo), at 六本木『サテンドール』/Sep. 5, 2017】

5日(火)、Nori Ochiaiさん(p)のリーダー・ライヴを六本木のジャズ・レストラン『サテンドール』に初めて聴きに行く。7月にサックス入りのカルテットで同店初めてのリーダー・ライヴをやってから2度目の出演。今回はピアノ・トリオwith2ヴォーカルという編成。
Nori Ochiaiさんは、2005年、(それまでのキャリアをゼロにして)単身NYCへ渡り、名門のニュースクール大学にて奨学金を得てジャズ・ピアノの研鎮を積む。以降、多くの本場のミュージシャンとライヴやレコーディングで共演(そのリストに、Jose JamesやUlysses Owensの名があるのにニヤリ)。リーダー作も発表。10年後の2015年6月に帰国し、以降、都内のライヴ・シーンで活動中。
が彼に興味を持ち出したのは今年。そのブログで日本の女性ジャズ・シンガーについて忌憚の無い意見を発しているのを知ってから。私自身、ここ数年、日本の女性ジャズ・ヴォーカルについて色々と思うことがあった。文化(質の向上)を不毛のものにしているのではないかと危惧するような夜な夜なのライヴの消化(自己満足傾向)。どの(顔合わせの)ライヴでも同じようなアプローチしか出来ない、「大御所」と共演しても(自分ペースの)歌い易く演奏してくれることを「楽しい」とし、実力と経験を兼ね備えた共演者の魅力を引き出せない、つまりバンド全体の魅力を引き出す能動的なサポート力、音楽家としての創造力がないままに「記念写真」を撮って満たされてしまう「スタイル」のヴォーカリストには些か辟易してもいた。プロとしての精神性もセンスも対応力も含めて、抜きん出た人が一人でも多く顕れて、その姿勢こそが真っ当に評価されて欲しいとずっと思ってきた。

今回のピアノ・トリオwith2ヴォーカルでのライヴに関して、リーダーのピアニストは事前にこんなPRをしている。
「ワールドクラスのリズムセクション、実カ、ミュージシャンシップも素晴らしいヴォーカリストのお二人と、“歌と伴奏”ではない、楽しく面白いジャズ」。「ヴォーカル好きの方、インスト好きの方にも、思いっきりお楽しみいただける」。そして、「みんなで気楽に真剣に楽しみましょう」とも言ってくれた。これは行くしかないでしょう。
そして、Nori Ochiaiという音楽家はNYで培ったスピリッツとセンスを共演の素晴らしい外国人ミュージシャン二人と見事に具現化し、リーダーの「どんなライヴにしたいか?」という声(姿勢)にヴォーカリスト二人が見事に応えた。ヴォーカル入りのジャズ・ライヴの理想形を見た思いがする。Nori Ochiaiさんの「対等に、一緒に、音を作りながら楽しんで」いく姿勢にヴォーカル入りライヴの可能性も見た気がする。
多くのことを気づかせてくれた、密度の濃いライヴ。(二日連続となった)“Left Alone”(by 堀内)や(もう何年も女性ジャズ・ヴォーカルのライヴで聴いてないような)“Good Morning Heartache”(by LiLi)のような「暗い歌」がどれ程傾聴に値し、場の空気をひとつ(密)に出来、真っ当に評価されるか。女性ヴォーカルがマイクを持って並んだ時のスキャットの応酬が(自然で確かな程に)ライヴの現場でどれ程魅力的な持ち味となるか。ピアニストの演奏が教えてくれる強弱記号「p」の魅力が、ヴォーカリストのパフォーマンスにも共鳴することにより、どれ程ジャズ・ライヴにメリハリを与えてくれるか。リーダーの人間を見る眼差しが集団創作にとってどれ程重要か。等々。
楽器奏者3者の演奏はヴォーカル入りも含めて、唸らされ、魅了される場面多々だった。特に、後半セット最後の方の“Take Five”。変拍子を更に拍子を変えての演奏。「ジャズ史上最強」と謳われたコルトレーン・カルテットの神がかったライヴ演奏の再現のような陶酔感がいつ果てることなく続き、このまま止めないで欲しいと心が欲していた。対峙するピアニストとドラマーの激しい応酬の間に在る(顔を紅潮させた)ベーシストの左右の指の激しい動きにひたすら目を凝らそうとするのだが、視線は右にも左にも向いてしまう。ピアノ・トリオだけでのここまで創造的な“Take Five”を聴くのは初めてだし、今後そうはないような気がしている。 

満足度の高かったライヴ。同店でのNori Ochiaiさんの次回のライヴに早くも期待が高まる。