ある日お店にブッキングされて初めてお会いした、共演させていただいたシンガーがいました。

ある程度ベテランらしく、態度もプライドもやや大きめ、上から話してくるような感じもしたり、
 


ニューヨークに短期滞在した事もあるらしく、本番前にはそんな話にもなり、いつ頃だったのか聞くと、
ちょうどテロがあった頃だったそう。

「怖くてすぐにでも日本に帰りたいと思ったけど、なかなか出れなくて、、、、」
そして
「でも、今になってはいい経験したな、とは思うけどね」

一瞬耳を疑いましたが、確かにそう軽く言い捨ててました。

百歩譲って、少しだけは言いたい事を理解するにしても、数多くの犠牲者がいる事を考えれば、一言誤解の無いようにフォローする言葉も必要でしょう。
言葉を使って、言葉だけでは伝えられないような感情を伝えるような事を仕事にする人ならなおさら、言葉にそんな無神経でいられるはずが無いです。

そこにいたにも関わらず、犠牲者の事などブラウン管の向こう側以下の事としてしか感じられないようなニュアンスで、シンガーというにはあまりに程遠い感性だと思わされました。

アメリカでそんな事いったら、ぶっとばしたくなる人がいてもおかしくないかもしません。

そして本番が始まるとき、

メンバーが定位置に着く前に、お店のBGMが止まる前に、ステージの照明が付く前に
『みなさん、こんばんは!!!』
それがそのまま、その日の音楽を表していたと思います。

自分の心は、怒りというより恐怖感みたいなもので凍りついてしまって、それはその日の最後の曲まで溶けることはありませんでした。自分の音も凍りきってしまっていたと思います。


プロとしては失格なのかもしれないけど、プロである前にただの人間なので、そんな未熟なダメな自分をその日だけは許す事にした、、、