主に若い女性シンガーを応援していると思われる方達に、「お勧めのシンガーはどんなシンガーですか?」と聞かれる事があります。

テーマが大き過ぎて、具体的に話し始めたらどのくらいの時間かかるか分からないし、本場で本物のジャズをある程度の年月かけて身体で感じていった事、理解していった事を簡単にポッと口で説明する事は難しい、というか不可能だとは思います。

ただ、よく分からないけど、より自然なジャズ、本格的なジャズを聴きたい、知りたいという方に対してなら、簡単に言える事が一つあるな、とは思いました。

それは、

5年,10年位の短い時間では、ジャズに聴こえる様なものを歌うというのは相当難しいのではないか、という事です。


なので、よく分からないとしたら、20年、30年、もしくはそれ以上の年月、真剣に追求していると思われるシンガーの中で探す方が確率は高いのではないかと思います。

綺麗な声、ピッチなど、正確に歌うだけでも大変な事かもしれないけど、更にジャズのリズム、フィーリング、テイスト、英語を身近な自分の言葉にする、などなど、気が遠くなるような道のりで、とても4、5年程度で形にできる様なものではないと思います。バカにするとか偉そうという話ではなく、普通に考えて当たり前だし、真剣にやっている人なら誰でも思う事なのではないでしょうか。

ある意味では楽器弾くより遥かに難しい位ではないかと思うけど、何故か巷には最近ジャズ歌い始めたばかりです、というシンガーと実力、キャリアのあるメンバーでのバンドのライブというのが溢れてます。本当は難しいはずだけど、感じない人には寧ろ楽器弾くよりも簡単で、できている気分になり易い、という事なのかもしれません。逆に始めて間もない楽器奏者が実力者ばかりのメンバーでのカラオケ的ライブ、という光景は殆ど見ないのではないかと思いますが、何とも言いようがないです。

当たり前ですが、難しさを感じなければ上達は難しいのかな、と思います。

素晴らしいジャズシンガーの方達はキャリアの浅い頃にも、勿論そのセンスや才能の片鱗は見せていたのでしょうし、確かに中には若くて素晴らしいシンガーもいるでしょう。でも、あまりよく分からない場合なら、長年のキャリアのある方達の中で探す方が確率は遥かに高く簡単ではないかと思います。

”簡単” という言葉はちょっと引っかかりますが、上手い適切な表現が見つからなくて、すみません。


ジャズを歌うための基本的なツールをかなりの次元で手に入れたていたとしても、そのシンガー生き方、人生などに共感できないと、リンクするところが無かったら何も響かない可能性もある。勝負を避けてばかりだったり、自分だけの人生を生きてこなかったらそういう歌を歌うのは難しかもしれない。

全てを兼ね備えた様な魅力的なジャズシンガーだったとしても、聴き手との相性によっては何も響かない可能性さえあると思います。

歌も、ピアノもしくはギターも未熟で、あまり人生経験も豊富でないシンガーソングライターのライブで何も感じれない、という事はまず無いのではないかと思うけど、上記の様なもの全て持ったジャズシンガーのライブでも何も感じれない、という事は大いに起こり得ると思います。


それがジャズの難しさでもあり、だからこその、心に響いた時の凄み、魅力、奥深さに繋がる部分でもあるのではないか、と思います。


ネガティブに捉えられてしまうかもしれないけど、何でジャズを楽しむ事が難しいか、についてはまた触れてみようと思います。 なにかとすぐに「見たくれがダサい、いい格好して見た目で惹きつけろ」みたいな、音楽の本質と離れた事だけしか言わない、言えない人もいますが、そんな簡単な下らない話ではないです。